クロアとフェズは、海沿いにしばらく歩いていた。
もちろん、歌を歌いながら。
「お、あっち見てみな。」
クロアが指をさす。
「あ・・・人がいるね。」
少し向こうに、人々がいた。
人数からすると、小さな町のように見える。
「行くか。」
2人は、その町に行くことにした。
『こんにちは』
声をあわせて、30代ほどの女性に声をかける。
「あら、こんにちは。見ない方だけど・・・旅の方ですか?」
クロアとフェズは、顔をみあわせる。
そして、フェズが答えた。
「はい、そんなものです。僕はフェズといいます。」
「俺はクロアです。」
軽く会釈する。
「あ・・・すみません。わたしはケイといいます。
 この町のことは、ご存知なのですか?」
「いえ。よろしかったら教えていただけませんか?」
と、フェズが言う。
「うちに来てくださいよ。」
ケイが誘ってくれたので、2人は行くことにした。
「ここがわたしの家です。」
石でできた、小さくてかわいらしい家だ。
庭には、花がたくさん植えてあった。
「きれいだな、フェズ。」
「うん。たくさんの花に、僕たち囲まれてるよ!」
ケイがほほえむ。
「ふふ、そうですね。どうぞあがってください。」
そう言ってケイは、家の中に入れてくれた。
家に入ると、たくさんの写真がおいてあったり、貼ってあったりした。
その写真に写っているのは、5歳くらいの男の子だった。
ケイがお茶を入れながら、町について話す。
「この町は、すごく平和なんですよ。」
クロアが言う。
「すごくのどかですよね。子供たちが安心して遊べそうです。
 自然も豊かだし・・・いいですねー。」
フェズが続ける。
「僕たちの家は、海の側にあるんです。だから、花とかさいてるのを見ると
 なんだか嬉しくなるんです。あまり花は見ないからね。」
ケイが言う。
「そうなんですか。花、好きなんですよ。綺麗でしょう?」
そして、
「はい、どうぞ。召し上がってくださいね。」
そう言って、紅茶とクッキーが出された。
「ありがとう、いただきます。」
2人は砂糖とミルクをいれ、紅茶を口にする。
「あのー。」
クロアがそう言ってすぐに、
「写真の子ですか?」
と、ケイが察する。
「はい・・・たくさんの写真がありますよね。この子は?
ケイの表情は、こころなしかくもったように見えた。
「この子はわたしの息子で、アロといいます。
 アロは・・・3ヶ月前に、病気で死んでしまいました。
 まだ悲しみが晴れず、写真もたくさん貼ったままなんです。」
クロアとフェズは、少しだまってしまった。
フェズが口を開く。
「庭に咲いていた花って、もしかして」
「そう、アロのために植えた花です。」
クロアがたずねる。
「では、ケイさん。ご主人は?」
ケイの表情はくもったままだ。
「主人は、アロが産まれてすぐになくなりました。
 持病の発作がおこって、そのまま・・・。」
「すみません、思い出させてしまうようなことを聞いてしまって。」
「いえ、いいんですよ、でも、『今は一人なんだ』って、孤独を感じてしまうことはありますね・・・」
クロアとフェズは、紅茶を飲み干して、同時に立ち上がる。
ケイがびっくりしたことを気にせず、顔を見合わせて、笑顔で
『YO!』



『天使が 舞い降りてきた
 僕たちに ほほえみかける
 いつか消えてしまう 幻
 それでも心には いつも残ってる
 与えてくれた幸せ それは 幻じゃないよ

 あの頃を 覚えてる?
 はじめて 出逢ったときを
 そのときの 嬉しかった思い
 ウソなんかじゃ なかったはず
 消えてしまうことを おそれずに
 残してくれた光 胸に抱いて

 あの時間を忘れずに 一緒にすごした時間を
 天使は見守ってる―』
クロアとフェズは歌った。ケイのために。
ケイは、涙を流している。
クロアとフェズはケイに歩み寄り、にこっと笑って肩に手をおく。
「あのさ・・・うまく言えねーけど、がんばってくれよな。」
「ケイさん、僕たちの想いは伝わったのかな。
 一人なんかじゃないよ。アロくんもご主人も、ケイさんのことを見守ってる。
 元気、出してね?」
ケイは、泣き続けていた。
「ありがとう、ありがとう。
 あなたたちの歌を聴いていると・・・
 心の中の冷たかったものが暖められた。
 いろいろなものが、伝わってきたわ。
 本当に・・・ありがとう・・・」
クロアが、
「こちらこそありがとう。ごちそうさま。
 じゃ、俺たちはいくね。」
と、礼を言う。
「ばいばい」
フェズが一言いい、家を出た。


家を出ると、そこには数人の人が集まっていた。
2人がたちどまっていると、
「いい歌だったよ・・・」
「ケイさんが元気になったのね!」
「お兄ちゃんたちすごい!」
「アロ・・・アロ・・・」
「ありがとう2人とも!」
・・・と、さまざまな人に話しかけられた。
「みんな、外で聴いていたんだな・・・」
「ね。びっくりだねぇ〜。」
すると1人の女の子が、
「お兄ちゃんたち、旅人さん?」
と近寄ってきた。
「あぁ、そうだけど・・・どうしたんだ?」
「次、どこか別のところへ行くんでしょ?」
「うん、僕たちは他の町へ行くよ。」
「・・・はい、これ!」
その女の子は、なにか紙をくれた。
「これは、この辺りの地図か?」
「そうだよ!多分役にたつから、もっていってよ。」
女の子は、嬉しそうにこっちを見ている。
「ありがとう。使わせてもらうよ。じゃ、コレあげるよ。」
フェズは、飴をひとつ、女の子の手にのせる。
「ありがとう、がんばってね!」
2人は手をふり、次の町へと向かう。

























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