『空のー 果てまでー 届けー 僕等の歌ー』
きれいな、よく通った声。
「やっぱりいい歌だね。クロアの声は、元気が出る。」
「そうかな、ありがと。フェズの声も、オレ好き。」
海辺で、2人の少年が歌う。
彼等の名は、クロアとフェズ。
小さいときから、ふたりは一緒だ。
クロアもフェズも、歌が大好きだった。
今もこうして、2人で歌っている。
その歌声は、本当に空まで届きそうだ。







「なぁ、フェズ」
クロアが話しかける。
「ん?」
「オレの歌で、元気が出るって言ってくれたよな。
 それって本当?」
「ったり前だよ!だってさ。クロアの声はきれいで、包み込むようにやさしい。
 それに、とびきりの笑顔。誰だって、元気が出るよ。」
フェズは、思ったままのことを伝えた。
すると、クロアが真剣そうに話す。
「オレさ・・・もっといろんな人に歌を聴いてほしいんだ。
 たくさんの人の笑顔を見たい、そう思うんだ。」
フェズの顔が明るくなる。
「それはいい考えだ!クロアなら、絶対やれるよ。
「『クロアなら』?」
クロアはそういって、にやりと笑う。
フェズは、やっと理解できたようだ。
「つまり、僕も一緒ってコトだね?」
「そうだよ。オレらの歌っていうのは、ふたりだからこそ在るんだ。
 『オレらの歌』で、みんなに元気を与えたいんだ。」
フェズは答える。
「そうだね。僕たちで歌おう。」
うたりはにこっと笑って、拳を合わせる。
そして、いつものかけごえ。
『YO!』




ふたりがつくった歌は、たくさんあった。
つくった、という言い方は少し合わない気がする。
なんといっても、感じたことがそのまま歌となり、口から出てくるのだ。
そして、その詞とメロディは、彼等の宝物となる。
クロアとフェズは、考えていた。
人に聴いてもらうといっても、何処へ行くのか。
生活はどうするのか。資金はどうするのか。
「あぁーっ。」
いきなりクロアが叫ぶ。
「クロア、どうしたの?」
「いくら考えても、答えが出ないんだよ。」
フェズがうなずく。
「僕も同じだよ。あのさ。」
「ん?」
「いっそのコト、考えるのはやめて行動に移そう。
重大発言をする。
「えぇ?いきなり?」
クロアは驚く。
構わず、フェズは続ける。
「うん。どうにかなるはず!」
「そんなにうまくいくか?」
フェズはほほえむ。
「僕等の歌の中にあるでしょ?こんな歌詞が。
 『この広い 世界には 僕等を受け入れてくれる人が 必ずいるさ
  それを信じようよ そして 進んでいこう』  」
その歌を、クロアが口ずさむ。
フェズの声が混ざり、その詞に魂が宿る。
クロアが言った。
「んじゃ、決定だ。」
「出発、いつにしよう。
クロアが少し考える。
「明日の朝。」
そしてふたりは、海辺の家へと帰る。
ふたりには、親も兄弟もいない。
物心ついたときから、ふたりは一緒だった。
同い年の、クロアとフェズ。
その間には、誰よりも強い絆がある。
資金はバイトで貯め、同じ家にふたりです住んでいる。
そんな彼等は明日、ここを出発する。
人々に元気を与えるため――










「おはよ、クロアぁ。」
「はよー。ふぁ・・・ねみー。」
「ちょっと、大丈夫〜?出発は今日なんだよ!」
「わかってるって。心配するな。」
既に準備は整っていた。
いつ出発しても、大丈夫だ。
だが2人は、出発の前に浜辺へ行く。
「落ち着くな、ここは。」
「そうだね。」
「・・・しばらくはここを離れるわけだ。」
「・・・そうだね。」
「それでも、大丈夫だよな?」
「そうだなぁ・・・」
「おい!考えてどーするw」
「うん・・・大丈夫。やっぱりここを離れるのは寂しいよ。
 でも、行くって決めたんだ。それに、クロアがいるもん。大丈夫!」
「そか。それなら安心だな。
 ・・・じゃ、そろそろ行くか。」
「うん。」
そして2人で、
『いってきます』
と、あいさつをする。
再びこの場所で、『ただいま』をいうために。










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